舞台『やがて君になる』 感想

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ブログ始めました。

 

 人生で初めてブログを書いているので恐ろしいほど緊張しています。Twittterはやっているんですけど文章を書く場所が変わるとこうも変わるものなんでしょうか。わかりません。とりあえずお手柔らかに。

 

 さてどうして突然ブログを始めたかというと、タイトルにある通り観劇してきたからです。

 舞台『やがて君になる』。2019年5/12(日)15:00開演の千秋楽に行ってきました。
以下感想になります。既刊7巻を含む原作40話までを読み終えているという前提のもとでの感想ですので、閲覧は自己責任で。あと普通に舞台版の演出等に触れまくりますので、「行けなかったので円盤観るまで我慢する!」という方もネタバレ気にされない方のみよろしくお願いします。
 
 
 
 
 
 
 
 とりあえず一言目は、「ありがとう『やがて君になる」でした!!!!!!!!
 
 いや〜〜〜〜〜本当に良かった。死ぬほど良かったんですよ。行ってよかった。生きててよかった。
どれぐらい良かったかというと、怠惰の塊オタクである私がブログを開設するくらいには。文章書くの嫌い&ド下手なのに。
少なくともそれほどまでに観客を突き動かすものであったのは間違いないです。
ありがとう。
 
 もう一つ思ったのは、『やがて君になる』が媒体にめちゃくちゃ恵まれている、ということ。原作はもちろん、アニメや外伝ノベル、そして舞台まで良い、っていうコンテンツは中々珍しいと思います。
所謂「実写」というのは「当たり外れ」が大きく(これはアニメ等にも当てはまるんでしょうけど、実写は特にこの特徴が顕著だと思っています)、たまにとんでもない代物が出てきてこき下ろされたりネタにされたりします。
  かくいう私も「実写」「舞台」などという媒体に今まで興味がなかった、むしろどちらかと言えば否定的なタイプでした。7つの球を集める実写映画でとんでもない目に遭ってたのもあって
そんな理由もあり申し込んだ時は期待半分不安半分だったのですが、杞憂も杞憂でした。ダイヤモンドで作られた橋を骨の折れた手で叩いてるくらい杞憂でした。不安という感情が初めから存在しなかったかのように、あまりに良すぎて終わった後しばらくぐずって泣いてました。赤ちゃんかよ。
 
 観られた方はもちろん、行けなかった、観られなかったという方にも絶対に観てほしい作品です。
 円盤をみんなで予約して観よう。終わらない再演を繰り返そう。
 
 
 
 
 
 遅くなりましたが、ここから登場人物の印象含めてストーリー等の感想を書いていきます。原作やアニメとはまたちょっと違った人物像かな?って感じもするので、その辺りも触れていければ。
 
 
 
小糸侑
 まず、「カワイイ!!!」でした。河内さんがかわいすぎる。思わずブロマイド買いました。「誰も好きになれない」芯の部分はそのまま、こよりちゃんや朱里ちゃんとの絡みなどでは元気で高校生らしい一面を見せてくれたと思います。コロコロ表情が変わっていて本当に可愛かったです。
 また、原作やアニメよりも圧というか勢いがある印象でした。感情を割と見せてくれる子というか、素直な子なんだなぁという感じ。早口でまくし立てるところや、大きな声で叫ぶシーンは音が響きやすい環境なのもあって鳥肌が立ちました。
「ばーか」のシーンが最高。優しすぎるのは相変わらず「キスしません」もの侑ちゃんの優しさがあふれていて大好き。
 
 
 
七海橙子
 強い。強すぎる。圧巻でした。こちらは侑ちゃんと反対にクールさが増していて、謎を纏っている印象が強かったです。変態成分はほぼ据え置き。「侑、エロい」では思わずキモオタスマイルを浮かべてしまった。会場が暗くて助かりました。
 生徒会長としての完璧な「七海橙子」と、姉を喪い、己の居場所を無理矢理その空洞に押し込めてしまった「七海橙子」がどちらも存在していて、軽く恐怖すら覚えました。
 これはひとえに橙子役の小泉萌香さんの力量によるところが大きいでしょう。はまり役すぎました。つい数秒前までは穏やかだったのに、本音を覗かせるその切り替えが恐ろしい。低く響く声で全身がぞくりとしました。表七海と裏七海の演じ分けが見事。相合傘での「嬉しかった?」や、序盤「それはダメ」、川のシーンでの「そんなこと、死んでも言われたくない」あたりがドス効いてて特に印象に残っています。
 
 
 
佐伯沙弥香
 あのですね、顔が良すぎますね、はい。沙弥香自身、原作や今回の舞台でも「顔は大事」と言っていますが、まさにその通りです。もちろん顔だけじゃなくて、佇まいや踵の返し方、座り方や礼の仕方まで素晴らしく、役者さんに佐伯沙弥香の所作一つ一つが憑依してるような雰囲気でした。礒部さん、すごい……
 折れてしまいそうな繊細さ、それでいながら折れない強さを持っている佐伯沙弥香が、あの舞台にはいたんです。行きの飛行機で『佐伯沙弥香について』を読み返していたこともあり、彼女への気持ちが何倍も膨れ上がりました。
 舞台における彼女の出番は原作に比べるとやや控えめでしたが、個人的には残念という感じはせず、まぁしょうがないよなぁという感じです。彼女についてきちんと描写をしようとすると少なくともあと2時間くらい必要なのではと思います。だって情報量多いし。外伝小説2巻も出てるし。というか3巻の発売決まったし。
『佐伯沙弥香について』、みんな買おう。
 スポットがほかの登場人物に比べて長く当たっていたり、七海先輩や侑ちゃんの方をずっと見ていたり、七海先輩が演説の推薦者を侑ちゃんにすると言った時に言葉は発さずともハッとしてそちらの方を見ていたりと、十分に描写されていたと思います。
 あと千秋楽カーテンコール後の磯部さんのコメントで胸がいっぱいになった。これはキャストコメントのネタバレを含むので一番最後に書きます。 
 
 
槙聖司
 楽しそう。マジで楽しそう。「僕は人の恋愛模様を見るのが好きなんだ~~!!!」と言わんばかりのワクワクぶり。原作よりもアニメよりもはっちゃけて開き直っている感じがありました。階段上でスポットが当たって一人語るシーンは、ミュージカルじゃないのに「おっ、歌いだすのか?」と思ってしまうほどでした。その大きな目は人の恋模様を見ているんだね。
 
 あとこれは悪いオタクの性みたいなものなんですが、生徒会劇が始まる前、七海先輩と侑ちゃんが会話してる後ろで堂島君のネクタイを直していて「オッホ~~~~!!」となってしまいました。ごちそうさまでした。槙役の石渡さんには本当に堂島派なのか答えてもらいたいです。
 
 
 
堂島卓
 かわいい。男の子に向ける感想じゃないのかもしれませんが、めちゃくちゃ可愛くて好き。
 まず声がデカい。あといつも楽しそう。そして5割増しくらいでアホの子
「女子率上がるの大歓迎!」の時の動きがインパクト強すぎる。本当に人生エンジョイしてるな、って感じで最高でした。
 役合わせの場面での「えっ女同士で付き合ってんの?」と言って全員から「読んでないな?」ってツッコミを受ける流れが綺麗すぎてめちゃくちゃ笑った。会場のオタクも笑ってた。生徒会の、そしてこの劇においてのムードメーカーでした。
 
 
 
叶こよみ、日向朱里
 侑ちゃんと仲のいい友人でいるという描写を中心に、それぞれ存在感をよく見せてくれていたなと思います。原作ではそれぞれ個別のエピソードがありますが、その辺りを描かれないのはこれも仕方がないかなという印象でした。それでもこよみちゃんがリボンをしない理由や、朱里ちゃんの失恋など必要な所は盛り込んでくれていたので不満はありませんでした。
 
 
 
箱崎理子、児玉都
 いやぁ、最高でしたね!私この2人大好きなんですよ。正直ここまで描写してくれると思っていなかったので完全に不意打ちでした。
百合度マシマシでイチャイチャしてた気がするのですが、濃密すぎるな......?
 都さんの声が原作を読んだ時のイメージとバッチリ合っていて息を呑みました。店主としての顔と、箱崎先生に甘える顔が使い分けられていて悶えまくり。箱崎先生も生徒のことを考えながらも都さんに振り回され可愛がられる小動物感がたまらんでした。
 「おかえり」と「男と女どっちが好き?」という個人的にお気に入りのやり取りをこの目で見られたのでおなかいっぱいでした。大満足。
 
 
 
アンサンブル
 アンサンブルの皆さんも素晴らしかったです。久瀬会長のお気楽さとか、槙くんに告白した子たちも素敵でした。演技指導をする市ヶ谷さんも重要な人物なので、熱を感じることができよかったです。
 
 
 
 こんな感じでしょうか。次はストーリーや描写について。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 すごい。はやい。世界最速で完結する『やがて君になる』だと思う。
 いやマジでテンポがいいというか、そんな言葉で表現することすら生ぬるいほどのスピード感でした。階段を一段飛ばしでリズムよく上れるときありますよね?私はあるんですけど、まさにあんな感じでした。ただ普通の階段と違うのは、私たちがテンポよく違和感なく階段を上り切れるように『やがて君になる』の方から絶妙な調節をしてくれている、という点です。原作のエピソードを早回し、時にカットしつつ繋ぎ合わせているのでめちゃくちゃ展開が早い。もちろんいい意味で。ゲームに例えるなら「必須イベントだけとりあえず回収してクリアしました!」みたいな感じだろうか。
 絶妙な展開の素早さは、ひとえに切り替えの思い切りの良さにあったと思います。
一個の場面をやりながら暗いところでは準備が進んでいて、今やっていた場面が終わるとライトが切り替わってすぐ次の場面へ、という手法が徹底されていて感激しました。
 実は舞台を観に行くというのは人生においてほぼ初めてだったので、その手際の良さというかしなやかさにただただ驚いていました。
 
 個人的にぶったまげた場面があって、原作第4話『まだ大気圏』。七海先輩が侑ちゃんの家がある書店にやってきてプラネタリウムを渡すという七海先輩の重さ的に重要な回ですけど、このイベントを生徒会選挙の直後に発生させたということ。
「手伝ってくれてありがとう」の意味でプラネタリウムを渡すとは!!!違和感がない!!!!と感動しました。どのルートでもプラネタリウムを渡す女、七海燈子。
見返りにキスをねだる女、七海燈子。
 
 
 
 あと素直に舞台の演出というものに感動しました。ライトはもちろん、電車や生徒たちのざわめき、幕に映し出される文字等、私が想像していたよりもずっと多くの技術が使われていました。
 窓枠でいいんですかね、あの大きさのバラバラなフレームが散りばめられていたのが個人的に好きでした。あと感心したのは四角い椅子とテーブルですね、場面転換すればあれだけで教室にも生徒会室にもカフェにもなれるのすごい。他には制服の変化で季節の移ろいを表現してるのは流石というほかないという感じでした。
 
 そして音の迫力について。「わたしの  なもののこと嫌いって言わないでよ」という声が流れているところで侑ちゃんが大きな声で「ばーか」と叫ぶところで泣いてしまった。演出の仕組み自体は分かっているんですけど、それでもこちらの心まで引き裂かれるような思いにさせてくるのはやっぱりすごいし、演者さんやスタッフさん方がすごく色々考えて作られているのだな、と思いました。
 
 
 
 また、全体的にすごく細かい。繊細で儚さが完璧に再現されている。演説前に七海先輩が侑ちゃんに手を握ってもらうシーンで本当に小泉さんの手が震えていたりと、めちゃくちゃ注意深く見ないと分からないことも多かったと思う。というか多分気づけなかったポイントがいくつもある。目が2つでは正直足りない
 スマホのバイブなどとんでもない。音すら『やが君』世界のものだった(公式Twitterでめちゃくちゃアナウンスが流れていたので不安だったが、千秋楽では特にそのような音しなかったのでほっとした)。
 メインで会話をしている人物の後ろで他の人物が動いていたり、舞台の端と端で人物同士が会話をするので、絶えず目を色々な方向に動かしていました。今回ほど目が外側についてる動物に生まれ変わりたいと思ったことはなかった。仕草一つにしてもその人物「らしさ」が追及されている感じで、2時間があっという間でした。
 
 あとは生徒会劇をやってくれたのがすごく嬉しかった!アニメでやるのかな~と思ってやらなかった(2期待ってますよ)ので、それを動く媒体で見ることができ感動しました。かなり前方の席だったのですが、視線の直線上に七海先輩というか小泉萌香さんが横になるベッドが運ばれてきて失神しそうになりました。
本当に圧巻すぎたので、『君しか知らない』を一つの演劇として観てみたいですね。
 
 
 
 そして肝心の終わり方だったのですが、個人的には5億点あげても足りないくらいの終わり方でした。
 序盤、「君のこと好きになりそう」からのアニメ版OP『君にふれて』ドーン登場人物ババーンで号泣したのですが、ラストでもう一度OPが流れてもうダメでした。
 ラスト、踏切に来た時点で原作とはちょっと違うなとなんとなく察していたのです。私が原作で息を呑んだ第2話『発熱』で初めてキスをした踏切、この場面は原作でも特に印象深いシーンだと思います。
 そんな踏切に、侑ちゃんのストレートな「好きです」から七海先輩の「嬉しい」ですよ。破壊力持ちすぎだと思うんですよね。このラストを持ってくるのが憎い、もう祝福するしかない。ちなみにパンフレットの最後の写真も踏切で2人が手を繋いでいる一枚で、色々と妄想が掻き立てられました。
 
 生徒会劇『君しか知らない』をきちんと経た上での「私が変わったのは、侑のおかげ」ですから。一番聞きたかった言葉なのでもう涙止まらなかったですね。本当に良かった。原作第34話『零れる』を6巻で読んだ時に七海燈子の振り切れなさにしばらく一人でキレ散らかしていた(割と本気で「こいつはもう人間の心を持ち合わせていないのではないか?」と思っていた)私としては、個人的に舞台の終わり方も美しいな、と思ってしまったのです。
 
というかここまで書いておいてアレですけど、舞台版七海めちゃくちゃ強い。人物紹介で書いた意味とはちょっと違う意味で強い。侑ちゃんの変化を受け入れるのがスムーズすぎて、泣きながら(七海......!)と思っていました。
 これは多分原作版七海燈子は8巻かけてじっくり変化していくのに対して、舞台版七海燈子は2時間で同じ位置にまで追いつく必要があったからなんですよね。
 言ってしまえば尺の都合なんでしょうけど、相対的に舞台版七海が七海燈子界最強に見える。
 
 
 
 話が散らばりましたが、そんなこんなで大満足の出来でした。
 というかね、星を掴んでそれを七海先輩と共有する侑ちゃん、侑ちゃんが掴んだ星を自分の耳元まで持っていって音を聴く七海先輩をカーテンコールで見せてくるんだもの、あの終わり方は誰がどう見ても納得するものですよ。
 第1話『わたしは星に届かない』から始まり、劇中でも星を掴めない侑ちゃんの演出を何度も眼に焼き付けさせた上でのこれでしたから、もうね。泣きますよね。
侑ちゃんが星に届いたんだなって、しみじみ思いました。
 
 『やがて君になる』という作品そのものをもっと好きになれる、色々とまた考えを膨らませることができる、掛け値なしに素晴らしい作品だったと思います。これもキャストさんをはじめとする舞台関係者皆さまのお力なんだと思います。ありがとうございました!
 
 
 
 
 
 
 舞台版の純粋な感想は以上です。一番最後には千秋楽カーテンコール後のキャストトーク感想を書いておりますので、ネタバレ等気にされない方どうぞ。
 ここからオタクの考察、自己完結、もとい妄言が始まります。
 本当に深読み、妄想、こじつけの類だと言われても否定できないので「こういうこと考えてるやつもいるんだなぁ」くらいで読んでいただければと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  • 「誰」が「誰」になるのか
 本作品のタイトルは『やがて君になる』ですが、読み進めてしばらくはタイトルの意味を理解できていませんでした。というかこの舞台版を観るまで、きっちりと自分の中で答えが出ていませんでした。舞台版を観て、主題歌を聴きまくって、今ようやく「こうなんじゃないかなぁ」という自分の中での答えが見つかったので、記しておこうと思います。違ってたら、違ってたで。
 初め、私は『「相手」が「私」になる物語』、もしくは『「私」が「相手」になる物語』なのかな、と思っていました。そういう意味での『やがて君になる』。
 ところが読み進めていくうちに(どうやらこれは違うっぽいぞ)と思い始めたのです。どうでもいいけど百合えっちで「相手」と「自分」が融け合っていくような表現があると興奮します。
端的に言ってしまうと、そういう描写が特に見当たらない。じゃあ「君」って誰なんだ?って思いながら、生徒会劇の話まで読んでようやく納得がいきました。
『「自分」が「自分」になる物語』なんだなと。
 沙弥香と侑が程度の差はあれ燈子に「本当の自分」になってもらって欲しいと思っていたように、この作品は「自分でいること」が大切なんだと説いているように思えました。それぞれがそれぞれに自分を確立していく、時には変化も痛みも伴うよね、ということなのかなと。
 実際沙弥香は胸を突き抜けた自分の想いを燈子にぶつけますし、燈子はそれを断って侑の元へ向かいます。それぞれが悩み、考え、自分で選択していく登場人物の意志の強さが、私たちを惹きつけているんだと思います。
 自分の考えがいつも正しいと思っているわけではとてもありませんが、『やが君』の根底にそう言う概念が流れているという考えは、当たらずとも遠からずだと思っています。
 
 そして、今回の舞台版を観て思ったんですよ。(前者も半分正解じゃね?)と。
 トリガーになったのが、アニメ版ED『hectopascal』です。アニメ放映時もそれはまぁこの歌詞とメロディにやられまくっていました。というか今回も最後の最後に流れてやられました。
私が注目したのは二番Bメロの歌詞です。
 

そんなことより明日は2人でどこかへ行こう

今の距離は壊さずに

少しずつ壊れていく 2人の距離はそのうち

限界越えて ああ ゼロに

 

  舞台版において、侑と燈子は結ばれました。互いに変化していく中で少しずつ変わる毎日。その結果で起きた踏切での侑の告白を、燈子は受け入れました。

 ここで注目したいのが、「侑と燈子はどちらも変化し、互いにそれを受け入れた」という点です。

 「好きを知らない少女」と「好きが怖い少女」は、スタートにおける立ち位置は違えど、「好き」を知り、変化していきます。変化し続けた少女たちは「ゼロ」の距離でぶつかって、ようやく結ばれました。

「ゼロ」とは、歌詞の中にもある通り「限界」をも越えた状態。融合して、混ざり合っているような状態でしょう。二つあった点が、一つの点になったということです。

 段々何を言っているのかが分からなくなってきたのでまとめてしまうと、「燈子の変化は侑の変化であり、侑の変化もまた燈子の変化である、つまり侑は燈子であり、燈子はまた侑であり、侑もまた......」ということです。

 また「変化」は、相手が受け入れてくれることが前提にあるのだと思います。原作では6巻で侑が変化することを拒んだ燈子により、侑の変化は一度拒絶されます。舞台版では尺の都合もあるのでしょうが燈子が受け入れ、侑は変化することができました。

 

 まぁ結局のところですね、「愛」が最強ってことなんだと思います。うん。愛は燈子も救うし侑も救う。佐伯先輩にも幸せになって欲しい。ついでに地球も救ってくれ。

 

 

 

 というわけで、感想以上に支離滅裂な文章になってしまいました。

 つまるところ、『やがて君になる』という作品は「自分でいることの素晴らしさ」を教えてくれているのかな、と思います。それは、「変化」が必ずしも「正解」というわけではないという意味も含んでいます。

 誰を好きになっても、男の子を好きになっても、女の子を好きになってもいい。あるいはまた、誰を好きにならなくてもいい。自分で納得いくよう考えて掴み取った選択ならば、それは素晴らしいことなんだと教えてくれている気がします。

 

 表現が重複してしまいますが、今回の舞台版で『やがて君になる』という作品、そして己の在り方についてより深く考えようと思うことができました。そういった意味でも、今回観劇できて本当に幸せだと思いました。改めてありがとうございました。

考察って難しい......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーテンコール後のキャストコメント

 千秋楽ということでなのか、カーテンコールの後全キャストさんからそれぞれコメントがありました。

キャストトークのある回があったことは知っていますが、それ以外の回についてこのようなコメントがあったのかは分からない(私自身へのネタバレを避けるため公演が始まって以降、本記事を書き終わるまで他の方の感想等は見ないようにしています)ため、ネタバレ配慮の意味も込めて一番最後に書くことにしました。

 

 まず、めちゃくちゃ面白かった。皆さん和気あいあいとしていて、本当に仲がいいんだなとほっこりしました。基本的に和やかなムードで、私たち観客も笑ってた。

 そしてこれは余談ですが、コメント全部終わった後にはけていく時、河内さんと小泉さんのめいいっぱいのハグで歓声が上がって幸せでした。

 

 肝心のコメントの様子ですが、がっつり仕切っている槙訳の石渡さんとか、やっぱり泣いてしまう燈子役の小泉さんとか本当に色々あったのですが、私が特に胸を打たれたのは、佐伯沙弥香を演じられた礒部花凜さんのコメントでした。

 

 礒部さん、劇中では凛とした佇まいの佐伯沙弥香を完璧に演じているのに、素の状態だとふにゃふにゃというかすごい脱力された感じでめちゃくちゃ可愛かったんですよ。

そんな中で、彼女が涙ながらに発した佐伯沙弥香への想いが素晴らしかったです。

「なんで沙弥香はしんどいんだろう、報われないんだろうって思ったこともあったけど、沙弥香として生きられてよかった」

 うろ覚えですが(ボケ老人かよ)、このようなことを仰っていました。

 もうね、号泣ですよ。そんなこと言われて泣くなって言う方が無理だから。

 本編を読んでも、外伝を読んでも、アニメを見ても、本当に幸せになって欲しいと思える沙弥香を、ここまで本気で考えて、理解しようとして、理解してくれた方が沙弥香を演じられていたんだなぁと思うと、自然と涙が止まりませんでした。

 ありがとうございました。